Bohlin変換の原論文・仏英翻訳

 スウェーデン天文学者 Karl Bohlin (1860-1939) 古典力学におけるKepler問題に対して新しい解法を導き,これについて述べた論文を1911年に発表しました.しかし,この論文はフランス語で記述されており,現在に至ってもWebオンライン上で確認できるのは,フランス語で書かれた原論文のみのようです.

 さて,Bohlinによりこの論文に述べられた方法はKepler問題の解析にあたって,極めて有効な手段を提供するものです.ざっくりとその内容を述べておくならば,運動方程式を記述する際にその座標に対してある種の複素数を対応させる変換を施すことで,最終的にKepler問題における特異点の除去を達成し,また,Kepler問題をRiemann面上の2次元調和振動子の問題へ落とし込むものです.

 このように,古典力学において極めて強力と思われる手法を示したBohlinの論文ですが,悲しき哉,Bohlinよりのちに,この応用を論じた論文は限りなく少なく,研究自体も活発ではありません*1.このような,状況を私なりに顧みて,左様の状況はすくなくとも,容易にアクセスできる原論文がフランス語のみであるためと思われました.そこで,拙いながらも仏英翻訳を試み完成したので,ここにPDFを掲載することとしました.

 翻訳にあたっては,東京理科大学S氏,およびフランスのLille工科大学F氏のご助力,ご助言を少なからず賜りました.両氏にはささやかながら,ここに御礼の言葉を記します.

 なお原論文は 

http://adsabs.harvard.edu/abs/1911BuAsI..28..113B

から.

 (訳文にはまだまだ修正の必要な箇所が多分に存在すると思われます.本稿に関し,意見等ございましたら,コメント欄にてご指摘ください.)

*1:もちろん,ロシア人物理学者V.I.Arnoldはその著書``Huygens and Barrow, Newton and Hooke"(1990)において楕円軌道の解析に際しこのBohlinによる方法を引用しています.